歯科用語集
カイスの輪
用語 | 読み方 |
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カイスの輪 | かいすのわ |
上の図は、虫歯の原因を解説している図です。
虫歯ができるためには、歯の状態、食べ物の状態、虫歯菌の状態が3つ重なったところで、虫歯が発生するということを表しています。
これに、時間を追加して、4つの輪としている場合もあります。
3つの条件が重なっても、一瞬で虫歯ができるわけではありません。
2つの要素が重なっても、虫歯はできません。3つが重なることで虫歯ができるのです。
それぞれの要素について説明しますね。
1.歯
ステファンのカーブで、脱灰のメカニズムを解説しました。歯の要因では、虫歯ができやすい歯の状態について説明します。
- 実は、食事をすることで、歯はきれいになります。自浄作用といいます。
食べ物とこすれることで、表面の汚れが取れやすいということです。
自浄作用が効きやすい部分は虫歯になりにくく,効きにくいところは虫歯になりやすいということです。
歯の表面のつるつるしている部分は自浄作用が効きやすいです。
逆に、奥歯のかみ合わせの溝、歯と歯の間の隙間、歯と歯茎の境目の3か所は自浄作用が効きにくく、虫歯の好発部位になります。
逆に言えば、このような場所をよく磨くことで、虫歯の予防ができるのです。 - 口の中でも、虫歯のできやすい場所、できにくい場所があります。
ステファンのカーブで解説しましたが、唾液の緩衝能によって酸が中和され虫歯ができにくくなります。
唾液の流れの良いところは、虫歯ができにくいです。
特に下の前歯あたりは虫歯ができにくい場所になります。
逆に、下の前歯に虫歯を作っている人は、カリエスリスク(虫歯リスク)の高い人といえます。
上の前歯の外側、上の奥歯の耳下腺開口部よりも後ろの部分(第二大臼歯や、智歯)などは唾液の流れば悪く、虫歯ができやすい部分です。
逆に言うと、舌を動かしてそのあたりの唾液の動かしてあげると、虫歯のリスクは低下します。 - 入れ歯を入れている方は、入れ歯と接している部分は唾液の流れが停滞します。
酸性に傾いた唾液が、戻りにくい場所といえます。ですから、入れ歯を入れていると虫歯ができやすくなってしまうのです。
逆に言いますと、食後に入れ歯を外して洗浄することで、唾液の流れをよくすることができ、長い目で見ると虫歯の予防にもつながります。 - 歯周病になると、歯茎がやせて下がっていきます。
歯のエナメル質は虫歯になりにくい場所ですが、歯茎がやせると、歯の根の象牙質が露出してしまいます。
そうすると、冷たいものが染みやすくなることは知られていますが、象牙質はエナメル質の5~6倍虫歯が発生しやすくなります。
とくに、歯間ブラシを使わない場合、歯の間に虫歯菌や、食べかすが残ることになり、虫歯の好発部位となります。 - 唾液の量が少ないと、虫歯のリスクが高くなります。
薬の副作用や、高齢化により、唾液の分泌量が減ってしまう場合があります。そうすると、唾液の緩衝能が低くなってしまいますので虫歯ができやすくなります。
唾液の出が悪くなってくると、のどが渇いて飴などをなめる場合がありますが、飴は長時間口腔内を酸性に保ちますので、ますます虫歯ができやすくなります。 - 歯を強化することもできます。
まずは、フッ素です。フッ素を使用することで歯の表面の石灰化物:ハイドロキシアパタイトがフルオロアパタイトに変化し酸に対して強くなります。
(強くなるだけで、無敵になるわけではありませんので、予防処置は必要です。)
とくに、高齢者の象牙質の虫歯予防にも有効なので、日ごろにフッ素入りの歯磨き粉を使ったり、定期健診でフッ素塗布を受けることはよいことだと思います。 - シーラントで虫歯の好発部位である、奥歯の歯の溝をあらかじめ埋めてしまう方法です。
特に自分でブラッシングを上手にできないお子様には効果的です。
(お子様の乳歯や、生えたばかりの永久歯は石灰化度が低いので、シーラントやフッ素塗布は有効に予防処置になります。)
2.食べ物
- 糖分を含んだ食物が,細菌の酸産生の材料となります。
ステファンのカーブで示しているように、糖分が入ってくると急激に酸性になり、ゆっくりと戻っていきます。
ですので、糖分の量よりも、回数や時間が重要な要素となります。 - 飴のように、長時間口に含むものがリスクが高いといえます。
また、糖分の入っている缶コーヒーなどを、ちょっとずつ飲んでいると、口の中が酸性の状態が続き、虫歯ができやすくなります。
ドライバーの方が、前歯の部分に虫歯を作っているのは、このようなことがあるのかもしれません。
運転中の眠気覚ましにコーヒーを飲まれる場合には、無糖のものをお勧めします。 - キシリトール入りガムを食後にかむと、唾液がたくさん出てきて緩衝能が作用しやすくなります、またかむことで物理的に食べかすや、歯垢が除去されることも役に立ちます。
キシリトールは、よい作用があるのですが、キシリトール入りの飴やガムなどは要注意です。
キシリトールが入っていても、そのほかの糖分が入っていれば、虫歯リスクが高いといえます。 - 甘いものは虫歯の原因と広く認識されています。
しかし、甘くないでんぷんも、唾液のアミラーゼにより、麦芽糖やブドウ糖に分解されるために虫歯の原因になります。
例えば、しょっぱいおせんべいやあられなども虫歯の原因になります。
3.虫歯菌
- 虫歯菌といっていますが、いろいろな細菌が関係していますが、主なものはストレプトコッカスミュータンスとラクトバチルス菌があります。
- ミュータンス菌は、有名ですが別項で説明しています。
- ラクトバチルス菌は、乳酸桿菌と言われてます。強い酸の中でも生存できる菌で、虫歯の穴の中で生息してさらに虫歯を進ませていきます。
- 人は生まれた時にはミュータンス菌を持っていません。
乳歯が生え始める1歳半~生え揃う3歳くらいまでにミュータンス菌の感染を防ぐことが大事ですが、主に家族感染などを通して多くの人がミュータンス菌に感染してしまいます。
個人的なことを書きますが、私は歯科医師、妻は歯科衛生士です。
私たち二人とも、口の中に修復物があり、虫歯リスクは高いといえます。しかし、2名の子供は、虫歯ができませんでした。
子ども自身は、プラークコントロールに熱心ではなかったですが。それは、親の二人とも上に記したような知識を持っており、自分のプラークコントロールをしっかりしていたので、子供に虫歯菌を移すことがなかったからと確信しています。
これから親になる方は、上記の知識を持っていただき、子供に虫歯菌を移さないようにしていただければ、お子さんの虫歯のリスクはかなり低くなります。
そう考えて、くどいほどの情報を書かせていただきました。
私たち歯科医師、歯科衛生士はほとんど虫歯を作りません。
それは、特別な道具や薬を使っているわけではありません。正しい知識を得て、それを実行しているだけのことなのです。知識は力です。参考になさってください。
札幌市東区北30条東の加藤歯科医院
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